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■猿若町発祥180年記念 平成中村座『十月大歌舞伎』『十一月大歌舞伎』取材レポート

猿若町発祥180年記念 平成中村座『十月大歌舞伎』『十一月大歌舞伎』

演目

< 十月大歌舞伎 >

【第一部】(11:00開演)

一.双蝶々曲輪日記
(ふたつちょうちょうくるわにっき)
角力場

河竹黙阿弥 作
二.極付幡随長兵衛
(きわめつきばんずいちょうべえ)
「公平法問諍」

【第二部】(15:45開演)

有吉佐和子 作
一.綾の鼓(あやのつづみ)

宮藤官九郎 作・演出
二.唐茄子屋(とうなすや)
不思議国之若旦那

< 十一月大歌舞伎 >

【第一部】(11:00開演)

一、寿曽我対面
(ことぶきそがのたいめん)

二、舞妓の花宴
(しらびょうしのはなのえん)

河竹黙阿弥 作
新皿屋舗月雨暈
三、魚屋宗五郎
(さかなやそうごろう)

【第二部】(15:45開演)

宮藤官九郎 作・演出
一.唐茄子屋(とうなすや)
不思議国之若旦那

二、乗合船恵方萬歳
(のりあいぶねえほうまんざい)

取材レポート

松竹_平成中村座_合同取材会_01
平成中村座が4年ぶりに浅草へ帰ってくる!
江戸時代の芝居小屋を甦らせ、時空を超えたエンタテインメントとして
多くの歌舞伎ファンを魅了する平成中村座に、
どうぞご期待ください!!

まずひと言お願いします。

中村勘九郎(以下、勘九郎) 新型コロナウイルスという未知のウイルスが入ってきて、平成中村座の予定も次々とキャンセルになり、平成中村座が復活できることを夢に見てきました。今回、10月と11月にやらせていただけることに感謝したいです。しかも宮藤官九郎さんが新作歌舞伎を書き下ろしてくださいます。ダブルで嬉しくて、その喜びも大きいです。先ほど調べていただいたところ、江戸時代の中村座は天保13年10月5日にはじまったそうです。今回も10月5日が初日です。ご縁を感じます。偶然が重なり、神様も味方をしてくれておりますので、良い公演にしたいと思っております。

中村七之助(以下、七之助) 第二部では宮藤官九郎さんによる新作歌舞伎を上演します。平成中村座で新作が行われるのは初めてのことです。それは大きなことですが、第一部では、見取り(みとり)狂言にこだわった父の遺志を継いで演目を決めました。10月公演も11月公演も素敵な演目になっております。若手も私達も、一生懸命やらせていただきます。ぜひ浅草へ足をお運びくださいますようよろしくお願いいたします。

各公演、各演目についてお聞かせください。まずは十月公演について。

『双蝶々曲輪日記 角力場』
松竹_平成中村座_合同取材会_02

勘九郎 7月に大阪松竹座でご一緒していた松本幸四郎さん、中村壱太郎くん、中村虎之介くんと話していた時に決めました。若手にチャンスとなるような演目を、と考えていたところ、たしか壱太郎くんが「『角力場』はどうですか?」と。「あ、いいんじゃない?じゃあ、幸四郎さんに習って?」「はい、分かりました…」という感じで決まりました(笑)。縁というのでしょうか、そういうものも大事なんです。 2011年に平成中村座でやらせていただいた時は、私は与五郎と長吉の2役を播磨屋のおじさま(中村吉右衛門)に習った思い出深い演目です。平成中村座での舞台稽古も見にきてくださり、丁寧に教えていただいた記憶がございます。今回は濡髪をやらせていただけることも嬉しいですね。

極付幡随長兵衛』「公平法問諍」 『綾の鼓』

勘九郎 獅童さんが「いつかやりたい」とおっしゃっていた演目です。(獅童息子の)陽喜くんと一緒にどうですか、ということで決まりました。通常の公演では、水野と近藤が舞台の下手(黒御簾の上)から劇中劇の芝居を見おろしますが、平成中村座でやった時はお大尽席(客席後方2階の特別席)に登場するんです。江戸時代にタイムスリップしたような感覚になったことを覚えています。今回もその演出ができればと思っていますね。
「綾の鼓」こちらは、扇雀さんがかねてより「()りたい」とおっしゃっていた演目です。

『唐茄子屋』

勘九郎 相当、面白いですよ。落語の「唐茄子屋政談」をベースに(宮藤)官九郎さんが書いてくださったのですが、「唐茄子屋」だけでなく色々な古典落語が入っています。「不思議国之若旦那」とあります通り「不思議の国のアリス」の要素も出てきます。これを、どうやるんだろうかと悩む作品は、相当面白いんです。これからの稽古がすごく楽しみです。
音楽は郷に従えということで、歌舞伎のものですべて行うそうです。

七之助 若旦那はどうしようもない男です。その男が、べつに改心するわけでもなく、どんどん物語が進んでいって…。出ずっぱりです。主人公がここまで出ずっぱりの歌舞伎もなかなかないように思います。舞台上にいない時間が…1分くらい?

勘九郎 大変です!

七之助 そして僕は、変わっている役と、まともな人間の2役。他はまともな人間があまり出てこない作品です(笑)。今から稽古が楽しみです。

勘太郎さんと長三郎さんもおりますが。

勘九郎 2人も台本を嬉々として読んでいます!勘太郎はミニ若旦那ですね。ミニ若旦那とは…何を言ってもネタバレになってしまうので、詳しくお話できないのですが、2人とも楽しみにしております。

続いて、十一月公演についてお聞かせください。

『寿曽我対面』
松竹_平成中村座_合同取材会_03

七之助 11月は出演者が変更となり、序幕に若手の皆で「寿曽我対面」をやっていただきます。確か、全員が初役でやることになりました。

『舞妓の花宴』

七之助 中幕では私が踊りをやらせていただきます。「舞妓の花宴(しらびょうしのはなのえん)」の男舞がいいのではないかと。厳かにはじまり、色々な衣裳でお見せして、華やかに終わります。お客様に、スカッとした気持ちになっていただけたら、と思い選びました。

『魚屋宗五郎』

勘九郎 父がいなくなり最初の平成中村座(2015年)で、音羽屋のおじさま(尾上菊五郎)に教わった作品です。女房おはまは、扇雀さんも初役でやっていただきます。とても好きな演目であり、とても良い作品です。楽しみにしています。

『乗合船恵方萬歳』

勘九郎 「乗合船」は松竹さんに勧められました。プロデューサーに「実はまだ1回もやってないんです」と言われまして。あ、そうだったんですねっていうことで決めさせていただきました(笑)。七福神が船に乗って華やかに登場します。

今回、浅草を舞台にした作品を浅草でやられますが。

勘九郎 台詞に地名も出てきますね。19時前には終わる予定なので、見終わってから散策していただければと思います。
浅草という町には10代の頃から新春浅草歌舞伎などでお世話になっています。町ぐるみでいつも応援してきてくれました。コロナ禍で観光客が離れましたが、今は徐々に人が戻りつつあるようです。平成中村座を浅草でやらせていただくことが町の活性化につながり、また浅草でやることが活きる作品になればいいですね。浅草だけでなく、中止になってしまった場所の方たちも待っていてくださっているので、これからもどんどん続けていけたらと思っています。

先ほど「若手にチャンスとなるような演目を」とおっしゃっていましたが、どのようなお気持ちでそうしようと考えられたんでしょうか。

松竹_平成中村座_合同取材会_04

勘九郎 父(十八世中村勘三郎)が、平成中村座の時に若手が大きな役に挑戦する場として試演会を行っていました。みんな役者ですから、色んな役をやりたい気持ちは持ち続けているものです。私たちも、父や先輩方のおかげで、若いころに色んな演目をやらせていただいた御恩があります。いくら稽古をしていたって活躍の場がなければダメなんですよ。僕たちもそんな場を作れたら、という気持ちです。

七之助 今はコロナ禍というものもあり、私たちも育ててもらった浅草公会堂での新春浅草歌舞伎が中止になっているんですね。それに加え、歌舞伎座でも1部・2部・3部制になり演目も限られています。それによって出番が少なくなっている若手が多いんです。今、大きな役に挑戦し、乗り越え、経験して育っていかなくてはいけない時期に舞台に立てなくて、芝居を見ることもできない、きつい状況の役者が本当に多かったと思います。今は歌舞伎座も緩和してきた部分もありますが。こういうことをやることは意義があることだと思います。
先月の新作『新選組』では、中村福之助と中村歌之助が歌舞伎座で主役をはりました。稽古では、坂東彌十郎さんが『あの2人が主役をやっている…』って涙もろいおじいちゃんみたいに泣いていました(笑)。でも、その気持ちは僕らも同じなんです。僕らもまだ若手ではありますが、さらに若い世代にも活躍してほしいと思っています。彼らにはその実力がありますから。「角力場」の虎之介くんにはどんどん出て行ってね、という気持ちです。

改めて平成中村座だからできることは何だと思いますか。

勘九郎 芝居小屋全体を使った演出はもちろん、ロングランでやれることですかね。何でもできるということを世に知らしめた場になっており、それが強みだと思います。古典から新作まで、っていう。歌舞伎座の小さくなったバージョンみたいな感じですね。

七之助 歌舞伎座は重厚な感じで、僕ら役者もお客様も程よい緊張感があって素敵な空間です。でも中村座はいい意味で緊張感がないというか、お客様も江戸の歌舞伎小屋に来た感覚になってくれているんです。お客様が楽しもうと思ってくれるような空間にしてくれていて、観に来ているというより参加しに来てくれているような気がします。お客様と私たちが、中村座を作っているというような。あの空気というのは凄いですし、初めて来てくださった方もその空気を感じ取ってくださると思います。それが中村座の魅力かなと思います。
そして、しばらくぶりに建てられた平成中村座の中に入ると、倉庫に眠っていたはずなのに、ふしぎと平成中村座の匂いがするんです。それはみんなの、役者、スタッフ、すべてのお客様が、楽しもう、楽しませようと作り上げてきたものがしみ込んでいるんだなと思います。それが、平成中村座マジックなんじゃないかなと思います。

最後に、宮藤官九郎さんの演出にどんな期待をしていますか。

松竹_平成中村座_合同取材会_05

勘九郎 すべてにおいて期待しています。宮藤さんも打ち合わせから何から楽しんで臨んでくださっていることが嬉しいです。途中で踊りが入って、目にも耳にも楽しい、凝縮されたエンタテインメント作品になるんじゃないかと思います。

七之助 宮藤さんの演出に、歌舞伎役者がついていけるかどうかでしょうね(笑)。どうやってやるんだろうって思っています。
映画の時はずっと笑って楽しんでやっていましたね(笑)。『大江戸りびんぐでっど』の時も宮藤さんは『こういう心情で』などの演出はされませんでした。僕たちの好きなようにやらせてくれて、そこから『ここは、こういう風に』と伝えてくれるような演出でした。今回もそんな感じになるんじゃないかと思います。自分がやるべきことをやれば、宮藤さんが何か言ってくれるはずです。そのためにも、まずは僕たちが一生懸命やらなくてはいけないなと思っています。

勘九郎 先日、リモートで本読みをしたんですが、その時、宮藤さんが獅童さんに『今の台詞を3倍速く読んでもらえますか』と注文されたんです。獅童さんも大汗をかきながら3倍速で読んでみたら、ものすごく面白くなったんです。そういうことなんだなって。そういう稽古になっていくんじゃないかと思います。