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■『血の婚礼』木村達成さん・須賀健太さん《インタビュー》

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血の婚礼
スペインを舞台にした愛の悲劇

INTRODUCTIONはじめに

スペインの伝説的劇作家、フェデリコ・ガルシーア・ロルカによる官能的な名作悲劇。
一人の女をめぐり、男二人が命を懸けて闘う、愚かしいほどの愛と衝動の物語。

本作は、実際に起きた事件を元に1932年に執筆され、翌年にロルカ自身の演出によりスペインで初演、同年にアルゼンチンでも上演された、ロルカの3大悲劇の1作。
舞台はスペインのアンダルシア地方。婚約した一組の若い男女が互いの家族の期待を背負いながら結婚式を迎えようとする姿、そしてそこに現れた花嫁の昔の恋人がすべてを変えてしまう抑えきれない愛を描く。数奇な血の宿命、言葉では説明のつかない愛と衝動、地の因習に縛られた男たちの闘い女たちの戦い・・・絡み合う事象が、ドラマを生んでいく。今の時代に圧倒的に足りない、“生身の人間のむき出しの熱情”を舞台上から浴びることができる、情熱的な演劇作品だ。

今回は、一人の女をめぐり命を懸けて闘う二人の男を演じる、木村達成さんと須賀健太さんのインタビューをお届けします。
おふたりは、舞台版『NARUTO-ナルト-』(’15年)・『ハイキュー!!』(’15~’17年)で長く共演し、今作はそれ以来、約5年ぶりの共演。久しぶりの共演となる今作への想いや意気込みを伺いました。

STORYあらすじ

南スペインのアンダルシア地方のとある村。母親(安蘭けい)と二人暮らしの“花婿”(須賀健太)は、父親と二人暮らしの“花嫁”(早見あかり)と結婚したいという想いを母に告げる。母親は、溺愛する息子の成長を喜びつつも、ただ一人の家族の旅立ちに複雑な想いがのこる。花嫁は優しく家庭的な娘と聞くが、気にかかる噂がある。息子と恋仲になる以前、心を通わせた男がいるという。男の名はレオナルド(木村達成)。かつて、レオナルドの一族に母親の夫と息子は殺されたのであった。

レオナルドは花嫁との恋が破局した後に、花嫁の従妹と結婚し、今は妻子と姑との四人で暮らしていた。レオナルドの友人でもある花婿は、心配ないと母に明るく語る。

花嫁は、花婿と幸せな家庭を築くと決意していた。しかし、花嫁の目の前に現れたのは、かつての恋人・レオナルド。思いもよらない人物の出現に激しく心が揺さぶられる花嫁。忍び寄る不穏な闇・・。

2人の男の愛がひき起こす、婚礼の日に起きる悲劇とは・・。

INTERVIEW木村達成さん・須賀健太さん インタビュー

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『血の婚礼』への出演のお話が来た時はどう思われましたか。

木村達成(以下、木村) 以前、森山未來さん主演で上演されたことのある作品だと聞いて(’07年)、そんな作品に出演できる嬉しさを感じ、ぜひやってみたいと思いました。でも何より、(須賀)健太と共演できるということが大きかったですね。数年前までは1週間顔を見ない日はないくらいずっと一緒にいて、ともに作品を作り上げた仲。この共演していなかった数年間、それぞれ別の現場で培った経験をぶつけ合える場所を与えてもらった。今も興奮が止まりません。

須賀健太(以下、須賀) 僕も同じです。戯曲のタイトルを知るより先に、(木村)達成と一緒にやると聞いたのですが、その時点で断る理由はありませんでした。達成の言ったとおり、しばらく別のフィールドで戦ってきたお互いの成長をぶつけ合える場所をいただけたというのは特別なこと。それだけで嬉しいし、やる価値があると思いました。

おふたりとも、何よりも共演が一番の嬉しかったポイントだったのですね。では、お互いの俳優としての魅力はどう捉えていらっしゃいますか。

木村 健太は僕がデビューするよりずっと以前から子役として活躍していたから、共演時(ライブ・スペクタクル『NARUTO-ナルト-』’15年、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』’15~’17年)は、僕から見ると、もう上手いを通り越して別の次元の存在でした。

須賀 僕の方は、達成は自分が持っていないものを持っているというのはすごく感じていました。すごいなと思う瞬間がいっぱいあった。アクロバットも多い作品でしたが、本当になんでもすぐ出来ちゃう。振付の人と話をしていて「こんな感じですか」とすぐ動いてみせちゃう。恐怖心とか、ないよね?

木村 そのへんのリミットは完全にぶっとんでたかも。でも今あれをやれと言われても怖くてできない! バク天やバク宙はもう1年はやっていないんじゃないかな。回ったり跳んだりする年齢じゃなくなった……(笑)。

須賀 あの頃の達成は怖いもの知らずだったよね。

木村 今は何をやるにも怖いです(笑)。色々な作品に出て、揉まれて、怖いものを知りました。

須賀 でも本当に、全然自分とは違うものを持った人がそばで芝居をしてくれていたなという感覚です。そういう人がそばにいるというのは、とてもありがたい環境だなと当時もすごく思っていました。

木村 当時は健太を前に、僕は何を武器に戦えるかということを考えていました。健太は幼い頃から芸能界で生きてきて、僕はもともと普通の高校生としてスクールライフをエンジョイしていましたから。その経験をぶつける場が、青春やスポーツをテーマにした作品だったのが良かったのかも。僕も野球をずっとやってきましたし、ある意味ホームな物語。自分の経験を嘘偽りなく発揮できる場だったから。そういうところを武器にして戦わないと、舞台上で健太と一緒になって、素敵な奇跡を生む瞬間は生まれないだろうと思って必死にやっていました。

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共演経験の中で印象的なエピソードを教えてください。

木村 僕はけっこう感情が高ぶることが多く、涙もろいのですが、千秋楽に健太が「達成、絶対泣くやん」って言ってきたからその瞬間に「絶対に泣いてやんない!」と思ったんですよ(笑)。そうしたら実際は、一番最初に泣いたのが健太だった(笑)。それはすごくよく覚えています。

須賀 達成の(『ハイキュー!!』の)卒業タイミングだったんだよね。顔を見た瞬間に泣いちゃった(笑)。

作品について伺います。『血の婚礼』はスペインの伝説的劇作家、ロルカの三大悲劇の1作で、実際に起きた事件をもとに1932年に書かれた作品です。この物語については、どんな印象を抱いていますか。

木村 綺麗だしドロドロしているし、この世界観の中に入れるのなら、今すぐ入りたいくらい。役柄も、僕がまだ挑戦したことのないタイプなので、やりがいを感じています。……公私混同しないように頑張りたいですね。

須賀 今の大丈夫!? 見出しになっちゃうよ?

木村 そりゃ生身の人間が演じているんだもん、憎しみとか苛立ちとかも共感していっちゃうでしょう!

須賀 そっちか、びっくりした~。(相手役の)早見あかりさんと仲良くなりたいとかかと思った。

木村 違いますよ(笑)!

須賀 僕はまだそれほど作品について深く触れていないのですが、今回は新たな翻訳の脚本になりますので、そのイメージを大事にしたいと思っています。もちろん戯曲としては世界中で、色々な形で上演されている物語ですが、そこに囚われずに、僕たちなりの『血の婚礼』を模索していく時間が大事になる。……話の筋でいうと、わりと単純で「男が花嫁を奪う」というものなのですが、そこに人間らしさがどう乗ってくるかで、物語が深まっていくのだと思います。それが役者としては楽しみな部分。お客様がどんな感想を持ってくれるのか、今からワクワクしています。

木村 ’07年版はかなり戯曲としてはカットされた部分もあって、(木村と須賀扮する役柄の)決闘のシーンなどは描かれていなかったみたい。今回はどうやらそれもあるらしいので……。

須賀 僕たち、決闘するんだ!

木村 僕らの出会いは殺陣ですから。またああいうのを健太とやれると思うと、ドキドキワクワクですよ!

演じる役柄は、木村さんがレオナルドで、須賀さんが“花婿”。レオナルドは花嫁の元恋人で、結婚式の日に花婿から花嫁を奪い去ります。ひとりの女性を取り合う関係性ですが、この役については現時点でどう思っていますか。

木村 レオナルドはわりと強気で勝ち気、「お前は俺しかダメなんだ」みたいな、ちょっと俺様的な男。でもその一挙手一投足に、ちゃんとしたバックボーンが感じ取れるようにしたいですね。

須賀 僕の演じる“花婿”は、たぶん100人見たら100人が可哀想だと思うようなポジション。愛する人を、しかも結婚式というタイミングで別の男に取られてしまうわけですから。でも「可哀想だな」に収めたくないなと思っています。実際に起きた事件がモデルになっていて、その中で大切な人を奪うとか、人と人が殺し合うといったことが描かれているのですが、その激情を受けるこちら側も、どこか狂気的なものを内包していないと、その選択にならないと思うんです。そういうところをきちんと描きたい。なので「可哀想」と思われているうちは正解じゃないのかな、と……。いや、まだ台本ができていないので、実際はじまったら「いや、これは可哀想だわ」となるかもしれませんが(笑)。

木村 こういうインタビューの場で発言したことと、本番に入って変わってくることって、よくあるよね(笑)。

須賀 でも大前提として、可哀想なら可哀想だとしても、その一色にならないようにというのは、自分の中で大切にしたいポイントです。

おふたりの共演に期待が高まるばかりですが、例えば『ハイキュー!!』の頃と、作品や稽古に対する向き合い方が変わってきたな、というようなところはありますか。

木村 以前はいい意味で“抜けて”いました。それは『ハイキュー!!』などだと肉体的な疲労度のコントロールが必要だということもあったのですが「このシーンをやっている間は休んでいないとしんどい」とか、そういう計算もしていたんです。でも最近は、どの作品も死ぬ気でやっているし、突き詰めている。役に入っている間は自分に戻らないよう常に心掛けています。このやり方は、いつか自分の身を滅ぼすのではと思っているのですが(苦笑)……、一瞬でも気を抜くと“木村達成”になってしまうんですよね。そうならないように務めています。もちろん稽古では素の自分になっているし、ましてや今回は信頼の置ける健太が隣にいるので、健太に助けを求める瞬間もありそうですが。

須賀 僕は、実は毎回稽古に入る前に「稽古って、どうやっていたかな」「どうやって芝居をしていたかな」と思うんですよ。ある意味新鮮な気持ちで毎回作品に向き合えています。ドキドキするし緊張もしますが、一度稽古場でリセットするのも大事なことだと思っています。だから今回は“『血の婚礼』の中の須賀健太”でいられるようにしたいです。

木村 僕も小心者だし、稽古に入る前はビビっている。でも稽古場は恥をかいて、お互いを知り合っていく経験をする場所だと思います。弱みをみせた時に相手の芝居が変わるということもあるだろうし。

須賀 うん。そうだよね。

木村 たとえば僕は、できるだけ台詞は歌いたくないし、リズムで芝居をしたくない。そして10人いたら10人その言い方をするというものではない“100分の1”を見つけていきたい。それを突き詰めることが、僕が演じる意味になっていくんだと思います。色々な作品を経験すればするほど、上には上がいて、自分の手が届かないものもたくさんあると身に染みて感じています。でもそれを掴みにいきたいし、そのためには一瞬も気を抜いていられません。

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お話を聞いていると、おふたりとも「今やる意義」を感じていらっしゃるようですが、今作にどんな期待感を抱いていますか?

須賀 ある種、『ハイキュー!!』や『NARUTO』が特殊だった部分もあると思うんです。原作があって、僕らがどう考えようが、観に来てくれるお客様は原作を絶対的な大前提としてご覧になる。その土台の上で僕らは芝居をする。そういう場所で僕らは一緒にやってきて、お互いの関係性とかもその中で捉えてくれる方もいたと思います。その後僕は緻密な会話劇や、逆に劇団☆新感線のようなフルスロットルで魅せるものなど、けっこう両極端な作品を経験させてもらっていますが、今回はわりとその両方の経験が使えるのかなと考えています。芝居で生々しく見せないといけない部分もあり、一枚絵のように美しい瞬間もあるかもしれない。自分の中に、その両方の引き出しは確実に増えていると思うので、今やる意味はそこにあると思います。

木村 うん。今も僕は、漫画が原作で、アニメ化、映像化もされている作品の舞台版をやっていますが(『四月は君の嘘』)、もちろん原作ファンも観に来てくれるのですが、作品をそのまま抜粋しただけだと舞台でやる意味はまったくないと思う。原作から受け取った感情で、新たな作品を構築する、それはある意味で別の作品になっているんだと思います。お客様が「原作の方が好きだったな」と言うのは自由ですが、僕らがそれすら超越するものをお観せできたら、観た方は原作と比較するような感覚にもならないと思うんです。この『血の婚礼』でもそういう重圧は感じていますし、「達成と健太が仲良しこよしやっている作品」と言われないように、愛と憎しみの物語をお客様に届けることができたら、舞台上で毎日奇跡が起こせると思います。今までもたくさん上演されてきた戯曲であるからこそ、舞台でやる意味や日本でやる意味、僕と健太がやる意味を考えて、作品をぶち壊すくらい、新しい感覚で観てもらえたらいいですよね。

最後に、今作で「これは自分にとっての挑戦だな」と思っていることを教えてください。

木村 わかりません(笑)。でも、わからないからこそ、すべてが挑戦だと思っています。現時点では、自分にとっては実力以上のものが求められる作品だと思っていますので、全身全霊で作品にぶつかっていこうと思っています。舞台上では、異質のオーラを放っていられたら、と思います。

須賀 聞くところによると生演奏があったり、音楽的要素が入ってくるらしいので……。

木村 得意でしょ?

須賀 いやいや。達成さんこそ音楽に関しては(ミュージカル経験も多く)百戦錬磨ですから。達成とは芝居で戦いたいし、お互いがどう成長したかはそこで測りたい。だからそれ以外の部分では、達成と同じ位置に立っていたいと思うんです。だから僕にとっては音楽の要素をどう作っていくのかが、ひとつ挑戦になってくるのではと考えています。

(取材・文・撮影:平野祥恵)