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■「青空は後悔の証し」岩松了さん・風間杜夫さん《インタビュー》

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明後日プロデュース2022
『青空は後悔の証し』

あらすじSTORY

男たちは窓の外を語り、
女たちは窓の中にいる男たちをみている。

その部屋の窓は広い。 窓からは建築途中の青空にのびる建物の尖塔が見えた。

パイロットを退職したロウ(風間杜夫)とロウの息子ミキオ(豊原功補)とその妻ソノコ(石田ひかり)は以前は同居していたが三年前に別居し、今は家政婦の玉田(佐藤直子)がロウに仕えている。 ロウはパイロット時代にスチュワーデスとして働いていた部下、今は郊外で小さなレストランを営んでいる野々村という女性と久々の再会を楽しみにしていた。
当時ロウは人間関係に疲れていた野々村を励まし、救いの手を差し伸べたことがある、いわば善行の思い出だった。 ところがその再会を前にしたある日、野々村のレストランで働いてるという若い女(小野花梨)が訪ねてきて…。

岩松了さん・風間杜夫さん
インタビュー INTERVIEW

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歳を重ねた「父と息子」がテーマ。
あまり演劇のテーマになっていないことを演劇にしていきたいんです

劇作家、演出家、俳優といくつもの顔を持ち、多彩なフィールドで活躍する岩松了が作・演出を務める舞台『青空は後悔の証し』が5/14(土)より世田谷区・シアタートラムにて開幕した。書き下ろし最新作となる本作は、岩松氏が「年齢を重ねた父と息子の関係を描いてみたかった」と語る意欲作。4月某日、作・演出を務める岩松さんと、元パイロットである主人公、ロウを演じる風間杜夫さんに話を聞いた。

美しい音楽を聴いて落ち込んだり、逆に暗い音楽を聴いて心が明るくなったり…
そんな人間の不思議な心のありようを描きたかった。〈岩松さん〉
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まずは、この作品を書いたきっかけやテーマからお伺いできますか。

岩松了(以下、岩松) ええと、これは私がお答えしますね。実はまだ台本は執筆中なのですが、基本的には、風間さんが演じる「ロウ」という男が、自分が過去に「善を成した」と感じている行為を懐かしむ……そのことを豊原功補さん演じる息子「ミキオ」は嫌がっている……という(笑)、そんな父親と息子の関係を描こうと思ったのが最初でしょうか。それから「善行」というものについて。「善行」、つまり「良いことをする」というのは、本当に良いことなの? 実は悪いことなの? みたいな(笑)。そんな「善行」をめぐる人たちの話、というのを演劇でやってみたかったんですよね。

「善行」は「善行」ではないかもしれないということでしょうか。

岩松 う〜ん。実はこの『青空は後悔の証し』というタイトルにもその思いを込めているのですが……言ってみれば何か「裏腹」のようなこと。「青空」って良い方向に向かうイメージがある言葉なのに、それが「後悔の証し」であるという、言ってみれば逆の印象をタイトルにしています。人間って、美しい音楽を聴いて落ち込んだり、暗い音楽で逆に心が明るくなることがありますよね。あるものに触れたとき、もともとのイメージとはなぜか逆の印象が生まれてしまう……そんな人間の不思議な心のありようを表現してみたい、という風に思っているんです。
だから、「自分は善行をなした」と思っているロウだけれど、それは本当に良いこと、美しいことなのか。美しい心ベースで始まった出来事なのか。そこによこしまなものはないのか、みたいなことを考えてみたりね。あとは豊原(功補)くんと石田(ひかり)さんが演じているミキオとソノコ夫婦、ふたりはけっこうな大人ですが、そんな年齢を重ねた夫婦の間にある問題というのもまた「裏腹」なのではないかと思っていて。どういうことかというと、人間は問題が起こると右往左往して、なんとか「問題がない状態」に事態を持っていこうとするじゃないですか。でも、「問題がない状態になったときに出てくる問題」というのもまた、僕はあると思うんですよね。例えば、「嫉妬すべきときに嫉妬しないってどういうこと?」みたいなこととか……。歳を重ねたときに、夫婦がそんな裏腹な問題をはらんでいくこともあるのではないか。それで、そんな息子の状態と、先程の父親の状態というのを照らし合わせて……ということをやろうとしています。台本は現在、鋭意作成中です(笑)。

稽古場で明らかになる部分が多いので、まずは何も考えずに稽古に臨んでいます(笑)〈風間さん〉
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風間さんは現在までのところ、台本を読まれてどのような印象を持たれましたか? また、ロウについてはどんな役作りやアプローチをされようと思っていますか。

風間杜夫(以下、風間) 役作りですか……(笑)。そうですね、稽古を観ていただくとわかりやすいかもしれませんが、岩松さんは、稽古場で俳優を何度も動かすことによって、台本の内容を深めたり、ときには台本以上のことを思いつく……ということがたくさんある方なんですね。だから僕は何も考えずに稽古場に臨んでいる、というのが正直なところです。ロウについても、稽古場で何度も演じているうちに、「なるほど、こんな人なんだな」ということがわかってくる。役が持つ性格やこだわりも、岩松さんの演出を受けるうちに明らかになっていくものなので……ことさら自分でこんな人間にしようと考えてくることはないですね。

稽古の様子も拝見しましたが、ロウは「マスクを買いに行って、お釣りは募金しちゃった!」なんて嬉しそうにしていて、少し茶目っ気もあるキャラクターなのかなと感じました。

風間 そうですね。ロウはこの場面で「マスクを買いに行った」という言葉を口にしますが、その後、家政婦の玉田さん(佐藤直子さん)との会話で、実はそれは真意ではないことや、この男が抱えている問題についてがわかってくる。そのときになって初めて、その前のシーンでひとりで嬉しそうにしていたロウの様子が効いてくるんです。だから今日は実際に演じてみて、「ああ、なるほど、(前のシーンで)そういう風にしておくと、あとが面白くなるんだ」ということに気付かされましたね(笑)。特にこの場面は、自分が善行を施したと思っている女性と再会することになって、ロウはちょっと胸がときめいている、心が高揚しているというシーンなので、この先どんな展開になるのかが楽しみになるところですよね。

家政婦の玉田さん(佐藤直子さん)という存在がいることで、おかしみのある雰囲気になりますね。

岩松 そうそう。玉田さんがいないと、ロウのプラスの感情を刺激する人がいなくなってしまうんです。玉田さんの役割は、ロウの「善行を施した」という思い出にポジティブな刺激を与えること。息子のミキオはマイナスというか、否定的な入り方をしてきますからね。ただ、玉田さんがロウを持ち上げたり、促したりすることは、ロウにとっては良いことだけれど、客観的には果たして本当に良いことなのか……という問題が、またここにも現れてくるんです。

風間 ふふふ、面白いですよね。

岩松 はい(笑)。ただ今はこうしてお話していますが、僕の芝居は往々にしてわかりにくいと言われることが多いんですよ。ただ、わかりやすいことばかりが良いことなのか? わかりにくいことはダメなことなのか? ここでもまたそんな疑問が出てきます。だから、そのあたりを巡る(お客様との)戦いが今回もやっぱりあるのかな(笑)。ただ、わかりにくく作っているつもりはないのに、なぜわかりにくいと言われてしまうのか。オレの中のどんな問題が、そんな印象を生んでいるのか……。そんなことはけっこう考えてみていますね。

年齢を重ねた人物を中心にしたお芝居に挑戦しています 〈岩松さん〉
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今作には、元パイロットのロウと息子夫婦であるミキオとソノコ、ロウの身の回りの世話をする家政婦の玉田さん。そこにロウが会うのを楽しみにしている「野々村さん」という女性や、謎の若い女性なども登場します。岩松さんは、それぞれの人物像をどのように作っていかれたのでしょうか。

岩松 まず、「歳を重ねた父親と息子の関係をやる」ということは最初に決めていたとお話しましたね。若いときに芝居を始めたこともあって、今まであまり年齢を重ねたキャラクターを中心に置いた芝居を作ってきていない気がするんですよ。あれ、いやそんなこともないかな(笑)。まぁでも今回は、年齢を重ねた父親とその息子、という話が面白い気がしたんです。以前、もういい大人になった息子に父親が手をあげる……なんて話があったら面白いんじゃないの? と思ったことがあったのですが、今回はそれよりもさらに年齢感は上。そうすると、一体どんな関係なんだろうって。母と息子ならなんとなくわかるのですが、父親と息子はどんな感じになるんだろうということを、自身が探りながら書いています。そんな話なので、基本的に風間さんの奥さんは出てこないんですよね(笑)。

風間 そうですよね、はい(笑)。

岩松 ロウの元妻、ミキオにとっての母親というのは、この作品ではほぼ話題にのぼらないんですよね、最後まで(笑)。じゃあなんなの、お母さんは? というところは、ちょっと想像してもらいたいなと思います。まぁ想像するというと語弊があるかもしれないけど、やっぱりそんな「隙間」のようなものがあるから培われる面白さというのは絶対にあると思っているんです。反対に、決まりきったものはあまり面白くないような気がしていて。父と息子の関係についても……その間には何があるのだろう? その「隙間」の部分も含めてなるべく膨らませていくために、他の人たちにも登場してもらっているという感じですね。例えば、豊原くんが演じるミキオを表現するために石田さんが演じるソノコはこんな人にしてみようとか、そんなようなね。家政婦の玉田さんにもまた役目がありますし……そんな感じで作っていますね。

舞台上での立ち位置や役者の動きが、人間同士の関わりを客席に伝えていく。〈風間さん〉
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本日は稽古の様子も拝見させていただきましたが、登場人物の立ち位置などは、何度も修正がありましたね。

岩松 舞台においては、登場人物の立ち位置がいろいろなことを説明してくれます。例えば、役者が舞台の真ん中で話している時間と、舞台の端で話している時間では、意味は全然違ってくる。だから、ある人物を特定の場所で話させることによって、表現しようとしているものがより伝えやすくなる、ということはありますね。登場人物が3人いたときに、2人が端にいて、1人が話せば、「こんな人間関係なんだ」ということが伝わりますよね。また、2人のときに、片方の人は動かないのに、もうひとりがバタバタと動いていたら、「どちらが動かされている側か」という関係性も伝わる。人の動きというのはいろいろ教えてくれると思うんです。セリフもね、登場人物の位置関係によっては言いにくかったものが、位置を変えると言いやすくなることもあります。だからその、何か良い方法を探していく、というのが稽古なんじゃないかな。

風間さんは、岩松さんの演出を受けて「セリフを言いやすくなったな」「動きやすくなったな」ということは実際にあるのでしょうか。

風間 そうですね。稽古では、いきなり「ちょっと動いてみてください」ということが多いのですが、その後、岩松さんが立ち位置やセリフを言うときの顔の向きなどを細かく修正されていくことで、登場人物同士の力関係や人間関係が、きちんとお客様に向かって開かれていく……ということはあります。「ドラマに出てくる人間同士の関わりを客席にしっかり開いて観せていく」という意味で、立ち位置を含め、役者がどこでどうしゃべって、どう動くかはとても重要。つまりそれが「演出力」なのだと思います。

岩松 それが杜撰な舞台は、やっぱり観ていてあまり美しく感じないんですね。やはり人の動きがきちんとしているほうがドラマに入っていきやすいし、正しい位置関係のほうが、役者もセリフを言いやすい、気持ちの流れがスムーズに追えて助かる、という部分があると思うんですよね。そして、そんな役者の姿を追うほうが、観る側もストレスが少ない気がします。

自分が過去に見聞きしたものではなく、「まだわからないこと」を演劇にしていきたい。〈岩松さん〉
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「父と息子」「善行について」「裏腹なこと」……今回取り組んでいらっしゃるテーマやキーワードに関わるところで、おふたりが「こんな方に観てほしい」というのはありますか。

岩松 どうなんですかね。年齢を重ねた人に観て欲しい……と言った瞬間にやっぱり若い人にも観て欲しいと思いますし。だからそういう何か、相反するものをこの作品のいろいろなところに感じていただけたらなって(笑)。僕は、なるべく演劇で扱われていないテーマに辿りつきたいと思っているんですよ。父と息子の関係もそうだし、夫婦の関係もそうだし……なるべく自分が過去に見聞きしたものではなくて、自分がわからないものにトライしたいという気持ちが大きいんです。この歳になっても、「初航海に出たい!」という気持ちはすごく強いんですよね。

風間 そうですね。僕も演劇好きな方にも、演劇は初めてという方にも、いろいろな方に観ていただきたいですね。演劇にはいろいろなタイプのものがありますが、その中で僕はこの、「岩松ワールド」というものがとっても好きで。僕の印象ですが、岩松さんの芝居には、常に何かが隠されていますから、今回の戯曲にもおそらく何かが隠されていると思います。例えばね……この作品でずっと話題になっている「野々村さん」という女性、この人多分、出てこないと思います(笑)。それから息子夫婦の間で引っかかっている、「担当編集の阿部さん」という人もいるのですが、この方もきっと、最後まで出てこないと思うんですよね、ふふふ(笑)。出てこない人との関係をこちらも引きずっていたり、すごく大きな問題にしているというのが、岩松作品の特徴ですから。だから今回も出てこない人がいるとしたら、そんな人たちのことを観終わった人がどんな解釈をするのかなと、それが楽しみのひとつでもあります。

「出てこない人」というのもまた重要なのですね。

岩松 そうですね。それこそ「野々村さん」について、ロウが話すときはもう当然、核心的なことになりますよね。でもそこをあんまり煮詰めていってしまうと、結局、すごく限定的になってしまう。話がちっちゃくなってしまうんです。でも、実際はもっともっと広いだろう、人間関係は! と僕は思うわけですよ。風間さんが会いたがっている人は、実はこんなに広いんだ……という印象にするためには、本人には「ちょっと、出てこないでくれる?」という感じがあるわけですね(笑)。

風間 はい(笑)。そうですよね。

岩松 『ゴドーを待ちながら』という有名な戯曲がありますが、あれでもゴドーが出てきちゃったら、会話をしちゃったら、どんどん話が狭まっていくでしょう。やっぱり存在を大きくするためには姿がない方がいい場合もあるんだよね。だから、そんな部分も含めて、お客様がいろいろなことを感じてくれたらいいなと思っています。

作品をわかろうと前のめりになる、そんな緊張感も、ときには必要だと思います。 〈風間さん〉
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では、今作の「見どころ」について教えていただけますか。

岩松 ふふ、その質問をされるたびに毎回言うのですが、もう「全部」ですね(笑)。あとはそうね、意外と役者じゃないことを言いますね。「あの(立てこみの)窓がきれいでしょう」とか(笑)。いや、自分が作ったところを言うと、自慢話になっちゃうから……。雪を降らせたら、「雪がきれいでしょう」とか、そんな言い方でなら言えるかなって。

風間さんはいかがでしょうか。

岩松 いや、オレがこれを言ったあとは言いにくいでしょう(笑)。

風間 ふふ、そうね、岩松さんがおっしゃるように「全部」見どころです(笑)! もう始まってから終わるまで、目が離せませんよ! 僕が岩松さんの作品にお客で行ったときは実際に毎回そうです。オープニングからこう、身を乗り出して。理解するために緊張を強いられますが、そこがまた非常にインテリジェンスをくすぐられる部分でもあるんです。そういう舞台なんですよ、岩松さんの舞台はね。先ほど、岩松さんのお芝居はわかりにくいかもしれないというお話がありましたが、僕は「わかろうとすること」もときには必要ではないかと思います。だからお客様もね、ただぼんやりと観ていないで(笑)。わかろうと身を乗り出して観てもいいのではないかと。その緊張感は、大変魅力的なものでもあると思います。

確かにじっくりと聞いていると、良いセリフがたくさんありますね。

岩松 そうなんです。「与える」と言う言葉がありますが、僕はそれで言うとそんなにお客様に「与えて」いないような気がするわけです。基本的に、お客様に与えるのがイヤなのよ(笑)。自分が観に行ったときも、与えられるのがイヤだという(笑)。

風間 ふふふ。

岩松 別に芝居をタイプ分けする必要はないけれど、「与える芝居」と「与えない芝居」があるとしたら、僕のは「与えない芝居」のほうに近いんですね。

風間 あはは! そんなこと言っちゃうと、売れるかなぁ、チケット(笑)。

岩松 いえいえ、「観る方にも参加して欲しい」という意味で言ってますから(笑)! 恋愛関係でも、向こうから「好きです」と言われたらあまり追いかけたくならないけれど、「嫌いよ」と言われたら「ちょっと待って」ってなりますよね? 僕は舞台と客席はそういう関係でいたいんです。こちら側から「好きです」なんて言うと嫌がられるんじゃないかと思っているからしらばっくれてはいるけれど、実はすごく客席が好き、というのが僕の舞台なのでね! だから「もう〜、知らないよ!」なんて言いながらでいいので、皆様にはついてきて欲しいんです(笑)。

はい(笑)。最後に、劇場に足を運んでくれるお客様にメッセージをお願いします。

風間 僕は岩松さんの作品に出るのはこれで6回目ですかね? 久々に「こういう演劇いいな」と思いながら今、参加しています。僕の芝居を長年観続けてくれているお客様たちは、「岩松さんの舞台だと、他では観られなかった風間の姿が観られるね」と言ってくれますから、そんな方たちには今回も楽しみにして欲しいですし、また若い世代の方たちにも面白く観ていただけるのではないかと思ってます。

岩松 舞台の注目ポイントとしては、大きな窓があります。しつらえているシチュエーションがマンションの高いところに住んでいるみたいな、空中に浮いているような、そんな生活空間を想定しているので。観ている方たちも、飛行機に乗っているような、不思議な感覚を味わえるのではないかと思います。割と具象に近いというか、抽象ではないので、そんな具象の良さを感じていただけたらなと思いますね。

風間 まずは劇場に足を運んでいただければ。お調子者みたいに言うなら、見どころ満載、お得感満載で、絶対に後悔はさせません(笑)。タイトルには「後悔」が入っていますけど……後悔はさせません、私が言い切ります(笑)!

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取材・文/小川聖子

『岩松了戯曲集 1986−1999』(リトルモア刊)5月25日全国書店にて発売。『青空は後悔の証し』公演劇場にて先行発売。

舞台稽古レポートREPORT

劇作家、演出家、俳優として幅広く活躍する岩松了が作・演出を務める舞台『青空は後悔の証し』が5/14(土)より世田谷区・シアタートラムにて開幕した。およそ1カ月前となる4月某日、都内スタジオでは出演者による稽古がスタート。まだ始まったばかりの稽古場の様子をレポートする。

出演者は風間杜夫、石田ひかり、佐藤直子、小野花梨、豊原功補ら。元パイロットの男ロウ(風間杜夫)は、パイロット時代の部下で、当時救いの手を差し伸べた(と本人は思っている)女性・野々村との再会を楽しみにしている。それをあまり快く思っていないのが、ロウの息子であるミキオ(豊原功補)。さらにその妻ソノコ(石田ひかり)や、現在ロウの身の回りの世話をする家政婦玉田(佐藤直子)らがそれぞれの立場からロウの様子を見守っているが……。

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この日の稽古は、ミキオ(豊原さん)とソノコ(石田さん)が待つ部屋に、ロウ(風間さん)が戻ってくるというシーンから。上手にはテーブルセット、下手にはバーカウンターや備え付け電話、パイプ椅子を並べて表現したベッドなど、室内を模した簡易的なセットが組まれている。

豊原さんと石田さんによる夫婦のシーンは、台本を片手にセリフや立ち位置を確認しながら進行。年齢を重ねた夫婦らしい、穏やかだがどこか倦怠感のあるやりとりが続く。そこに、家族に探されていたロウ(風間さん)が戻ってくる。ミキオに「どこにいたの?」と声をかけられ、どこかとぼけたセリフ回しや動きで応える風間さん。思わずクスリとしてしまうやりとりに、それまでの停滞した空気が一掃され、ストーリーが進む予感が満ちる。

この後繰り広げられる、ミキオ、ソノコの中年夫婦とその父であるロウとの会話は、多くの人が思わず「わかる、この噛み合わない感じ!」と苦笑してしまう、岩松作品らしい絶妙なセリフ劇。話が通じずイライラした様子で感情的になるミキオと、それを制するでも味方するでもなく、どっちつかずの態度で眺めるソノコを、豊原さん、石田さんが巧みに演じる。

一見スムーズに見えるやりとりにも、演出の岩松さんからは立ち位置や動線、セリフを言う際に込める意図の確認や細かな修正の指示が。「声のトーンを少し下げてみて」「ここはわざとバタバタして、急がされている様子を出したい」「ここはロッキングチェアに座って言ってみるとどうですか」など、細かなリクエストに即座に対応し、なめらかな演技に昇華していく役者のみなさんはさすが。何度も同じシーンを繰り返しながら、最も適切な動きやセリフの間合いを固めていく。気がつくとあっという間に45分が経過!

その後、家政婦の玉田(佐藤さん)が登場。息子夫婦が去ったあとは、風間さんと佐藤さんふたりのやりとりに。息子夫婦がいるときとは異なる、どこかリラックスしたロウの様子を生き生きと演じる風間さんと、ロウを上手に乗せたり、少し引いてみたりと、巧な匙加減でリアクションする佐藤さんがふたりのユニークな関係を醸し出し、なんとも惹きつけられるシーンを作っていく。ここでも岩松さんは、「このセリフは前を向いて、真剣な感じで言ってみて」「ちょっとこの小道具を追加するとどうだろう?」と何度もシーンを流しては細かな演出を足し引き。そのたびにキャラクターの輪郭やセリフがいっそう際立ち、解像度の高い舞台に仕上がっていくようだった。

ノンストップで進んだ稽古は、すでに開始からおよそ1時間40分が経過。「今日のパートを最初から通そう!」という稽古に差し掛かると、途中で小さなハプニングが。風間さんが「38番」と言うべきセリフの駐車場番号を、つい「18番」と言い間違えてしまうのだ。それが妙にツボに入り、笑ってしまう豊原さん。その姿につられ、石田さんも思わず笑顔に。「18番って思い込んじゃっていたんだよ〜(笑)」と照れる風間さんに、「何番でもいいですよ(笑)」と岩松さん。「でも決めてくれないと、オレが本番笑っちゃうかも……」と困り顔の豊原さんに現場スタッフも笑い、和やかな空気が流れる一幕も。その後、間に細かな修正や確認を挟みつつ、最後まで通すと、穏やかな雰囲気のままそのパートの稽古は終了となった。

本作は、揺れ動く人間の感情やリアクションを巧みなセリフとリアリティのある演出で見せる舞台が人気の岩松了氏による書き下ろし最新作。「年齢を重ねた父と息子の関係を描いてみたかった」と本人が語る本舞台は、5/14(土)より世田谷シアタートラムにて開幕したのち、大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて6/4(土)・5(日)上演予定。

取材・文/小川聖子