チケットセディナ

■《インタビュー》宝塚歌劇団雪組 望海風斗さん

この夏、雪組の新トップスターに就任、プレお披露目公演『琥珀色の雨にぬれて』『“D”ramatic S!』をひかえた望海風斗さんにお話をうかがいました。

PROFILE/望海風斗
10月19日生まれ、神奈川県横浜市出身。花組に配属後、2014年11月17日付で雪組へ組替え。2017年7月24日付で雪組トップスターに就任。2017年8月25日(金)〜 9月18日(月)に開催される雪組全国ツアー公演『琥珀色の雨にぬれて』『“D”ramatic S!』でトップスターお披露目。

◆善い人も悪人も、役で人生を生きるのは楽しい

★望海風斗01――ここ最近はドン・ジュアン』や『アル・カポネ』など、善悪で分けるなら「悪」の側の役も多かったですが、『星逢一夜』の源太や『Victorian Jazz』のナイジェルなど「善」の役もとても魅力的でした。望海さんは究極の「善」と「悪」を演じられる役者さんだと感じるのですが、ご自身としては如何でしょう?

「善」の役のほうが演じるのは難しいです。善い人だから真っ白かというとそうではなくて、その人なりの黒い部分もすべて受け止めつつ乗り越えてきた人だと思うんです。きれいな人というだけではない部分を出すのが難しい。

――どちらの役が好きですか?

悪役を演じるのはすごく気持ちいいのですが、作品の中で「友だちがいない」という状態がもれなく付いてきます(笑)。でも、どんな役でも自分ではない人生を生きられるのはとても楽しいですね。

――悪役の気持ち良さとは、どういうところなのでしょう?

発散できる面がありますし、宝塚の悪役は悪人でもどこか憎めなかったり、そうなってしまった背景があったり、お客さまに共感していただける部分も必ずあるのがいいなと思います。

――お披露目公演「ひかりふる路(みち) 〜革命家、マクシミリアン・ロベスピエール〜」のロベスピエールはまさに両方の面を持った役だと思うのですが、この役をやると聞いたときどんな風にお感じになりましたか?

私自身もロベスピエールに対するイメージは「悪」のほうが強かったのですが、見る角度が違えばヒーローになるのが面白いところで、今回は意外な一面を観ていただけそうなので楽しみだなと思いました。

――宝塚作品には何度も登場している人物ですが……。

色々な作品で演じられているので、ある程度のイメージは固まっていると思うのですが、今回はロベスピエールの人生を若い頃から掘り下げて演じられるので、共感してもらえる部分もきっとあると思います。

◆色々なタイプのデュエットに挑戦したい

★望海風斗02――新トップ娘役として共にスタートを切る真彩希帆さんの、望海さんからみた一番の魅力は?

周りの人を笑顔にさせる「陽」のオーラがとても強いところでしょうか。もちろん本人は色々悩んだりもしていると思いますが、それを人にあまり感じさせないところが、すごいなと思います。

――歌に定評のあるお二人の奏でるハーモニーへの期待も大きいですが、二人で歌ってみたい歌は?

色々なデュエットに挑戦したいです。バラードだったり激しい曲だったり、軽やかで楽しい曲だったり。一緒に歌うことでの感情の高まりもあると思うので。

――やはりお芝居の中で歌うことは、望海さんにとっては特別なものですか?

芝居と歌が常に途切れないようにしたいと思っています。たとえば、全国ツアーの『琥珀色の雨にぬれて』は再演ということで主題歌のイメージがとても強いので、ともすれば役から生まれ出る感情で歌うのではなくて、知っている曲として歌ってしまいそうになるんです。それが再演の怖さですね。

 

◆まとまる力に、個性も加わった雪組に

★望海風斗03――2014年に花組から雪組に組替えされましたが、そんな望海さんから見た「雪組の強み」と、逆に花組育ちの望海さんが雪組に吹き込めた新風は、それぞれどのようなものでしょう?

雪組のいいところは、みんな本当に素直で、まっすぐな気持ちで向かっていくところです。
宝塚が大好きで、男役が大好きで娘役が大好きで……という部分は雪組も花組も一緒ですが、雪組は、作品ごとの雰囲気をきちんと出そうとか、真ん中の人にしっかりついて行こうという力がとても強い。だから、すごくまとまるんだと感じます。でも、そこからさらに一歩、男役として娘役として、もっとみんなが花開いて欲しいです。それぞれとてもいいものを持っているので、恐れずに出していって欲しいと思います。

――望海さん、下級生から見たらどんな先輩なんですか?

……うーん、それは下級生に聞いてみてください(笑)。もちろん厳しいところもあるとは思います。でも、私は下級生のことはわりと気になるほうで、「今、悩んでいるのかな」とか「壁に突き当たっているところなのかな」と気付いたときは、何かヒントになることを言ってあげられたらと思っています。それで自分も初心に帰れますから、時間があれば話しかけるようにしています。

◆貸切公演、私たちも楽しんでいます

――貸切公演ではアドリブもあると思いますが、『幕末太陽傳』ではいかがでしたか?

『幕末太陽傳』の高杉晋作役は、とにかく一生懸命生きているところ自体が面白味だったので、アドリブに対しても振り回されていればいいと考えて、うまく返そうというのは、やめました(笑)。でも、本当にごく稀にうまく返せたとき、悔しそうな佐平次さん(早霧)を見るのは、すごく嬉しかったです(笑)。

――貸切公演でもおなじみの、セディナのカード会員様にメッセージをお願いします。

貸切公演って、じつは舞台に立つ私たちも楽しみなんです。やはり初めて宝塚をご覧になる方や、普段あまり観ないけれど「貸切公演のチケットが購入できたので観てみようかな」というお客様も多いので、反応が新鮮ですね。気負わずお楽しみ頂ければと思います。

★望海風斗04

撮影・鞍留清隆


 

文・中本千晶(なかもと ちあき)
プロフィール>

1967年兵庫県生まれ、山口県周南市育ち。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。
舞台芸術、とりわけ宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。
主著に『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『宝塚歌劇は「愛」をどう描いてきたか』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)。早稲田大学非常勤講師、NHK文化センター講師。


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